ハロウィンは、もともとはイギリス・ケルト地方で収穫の時期を終えた10月31日を1年の終わりとして、新年を迎える前の厄払いのような感じで続けられていたお祭りです。悪霊を寄せ付けないよう、怖い恰好をして町内を練り歩いていたんだそうです。スピルバーグの映画「E.T.」の大ヒットによって、日本でもハロウィンのお祭りが広く知られるようになり、いつしか日本の季節行事の一つにも成っているようですね。
十年ほど前、ノルウェー・ルーテル宣教会の招待を受けて約一ヶ月北欧に滞在したことがあります。目的は永年に渡る日本宣教の記念ゲストとして、北欧各地の祈りの家、国教会、神学大学、大学院、専修学校、高等学校、小中一貫校(十年制)、プレスクール(幼稚園)、福祉ドクターズマンション、福祉作業所・スヌーズレン他、約三十会場で講演と讃美の奉仕をするというものでした。
(※ルーテルとは宗教改革者ルターのドイツ語読みです)
その合間、ノルウェーの児童福祉施設と特別支援学校の見学を依頼していたんですが、ノルウェーに児童養護施設や特別支援学校、特別支援学級はありませんでした。入院加療を必要とする子ども以外は、全て地域の小中一貫校の通常学級に在籍していたのです。学級定員は二十五人以下で完全複数担任制が敷かれていました。そして全ての小中一貫校に資格を有する特別支援専門教員チーム(十人以上)が配置されていて、クラスに入って子どもをサポートをしたり必要に応じ対象の子を引き抜いて個別訓練や個別発達教育支援を行っていました。我が国のように遠く離れた特別支援学校にスクールバスで通わずとも、それぞれがそれぞれの暮らす地域で特別支援専門教育を受けられる体制(2000年に教育法改正)が整っていたのです。
(因みに、スウェーデンには特別支援学校がありますが、IQ70未満の知的障碍児に限定され、以外の障碍を有する子どもは全て通常学級に在籍。聴覚障碍の子どもには手話通訳の配置が義務化されるなど、居住地域で通常教育と特別支援専門教育の両方を受ける権利が保障されています。)
ノルウェーの全労働人口に対する公務員比率は十五%と我が国の三倍に相当しますから、当然、税率も高く、国民は三十三~六十六%の所得税・市民税(年金、健康保険含む)の他に二十四~二十五%の消費税も納めていました。しかし、誰に尋ねても税を高いと答える者はありません。
国民の平均所得が我が国のほぼ倍だったことや、医療費ゼロ、大学院までの学費もゼロ、という手厚い社会保障制度があってのことなのかもしれませんが、ノルウェーの障礙児を取り巻く教育制度の在り方は、実にうらやましく感じました。
三十代前半で庭付き一戸建ての家を建て、四十代前半でクルーザーを取得するのが平均的なライフスタイルで、サービス残業はなく、皆毎年のように有給休暇をがっつり一ヶ月程度取得して、家族で海外にバケーションに出かける暮らしを楽しんでいました。
「働くために生活する」我が国の価値観とは真逆で、「生活を愉しむために働く」家庭中心のライフスタイルが浸透しているように思われました。ヨーロッパから視ると、仕事を最優先にする日本のライフスタイルは、どうやら非常識に映るようです。
滞在した一ヶ月は大変心地良く、帰国してからの一ヶ月逆カルチャーショックに苦しんだことを覚えています。
『どうして日本はこうなんだろう…』と。
私たちは何のために生まれ、何のために生きているのか。そんなことを問い直す機会となりました。皆さんはどう思われるでしょう。