ハロウィンは、もともとはイギリス・ケルト地方で収穫の時期を終えた10月31日を1年の終わりとして、新年を迎える前の厄払いのような感じで続けられていたお祭りです。悪霊を寄せ付けないよう、怖い恰好をして町内を練り歩いていたんだそうです。スピルバーグの映画「E.T.」の大ヒットによって、日本でもハロウィンのお祭りが広く知られるようになり、いつしか日本の季節行事の一つにも成っているようですね。
1873(明治6)年の12月3日。我が国は、それまで使用していた大陰太陽暦(旧暦)を太陽暦(グレゴリオ暦・新暦)の1月1日に切り替えました。このため旧暦と新暦とでは約1ヶ月の差が生じることになった訳ですが、お盆も旧暦の7月に当たる8月13日~15日に祀(まつ)られるようになりました。
私事になりますが、今年は元旦に心不全で他界した義父の初盆に当たります。私自身はクリスチャンですが故人はお寺の檀家だったので、故人の遺志を尊重し法要を営むことにしています。とはいえ、このコロナ禍です。法要でクラスターを発生させることもできませんし、御院家(住職)さんと相談してオンライン法要にするかなぁ…なんて考えたりしています。昨年は五年前に他界した義母の盆法要を故義父の主催により、遠方の親族はオンライン参列としたので経験済みでもあるんです。
最近はいろんなことがオンラインになって、カメラが写す上半身だけを整えて下半身はパジャマのまま講義や会議に参加する“隠れズボラ”も流行しているようですが、オンライン法要もやってみると親族を出迎えたりお見送りしたりの手間がなく、精神的には随分負担の少なかったことを感じました。尤も、だからと言って下半身パジャマだった訳ではありませんが…。気軽な反面、なんだか故人に申し訳なくもあり味気なくもありましたが、時節柄仕方のない妥協なのかなという気もしました。
ワクチンの接種人口も徐々に増えて、少しずつ明るい兆しも見えつつありますが、ワクチンを接種していない若者に過去最大の感染拡大が報告されるなど心配が絶えません。今後、デルタ株がより感染力の強い株に変異しないことを願うばかりです。
聞くところによると今回の新型ウィルスは、通常の4~5倍の長さのゲノム配列を有しているそうで、増殖時にコピーミスが発生しやすく、半端なくミスコピーが大量に発生しては消滅しているんですが、たまたま強い特性を有してミスコピーされたのが、それぞれイギリスで発見されたアルファ(α)株、南アフリカで発見されたベータ(β)株、ブラジルで発見されたガンマ(γ)株、インドで発見されたデルタ(Δ)株でした。これが何を意味するのかというと、今後デルタ株増殖の過程で起こるコピーミスによっては、更に強いイプシロン(ε)株が出現しないとも限らないということです。これが、変異の正体。“進化”という見方もできるのかもしれませんが、実態は単にコピーミスの成せる業でしかないのです。
私たちに今できるのは、このコピーを食い止めることに尽きます。
ウィルスが自身をコピーして増殖するためには、宿主(しゅくしゅ)を必要とします。宿主とは人間の体細胞のことですが、体内に抗体がある場合にウィルスは宿主内部に侵入できず、自身をコピーできないまま体外へ排出されることになります(この場合、PCR検査陽性者が=感染者とは限りません)。
ワクチン接種によって私たちが集団免疫を持ちウィルスのコピーを食い止めることは、接種できない妊婦さんや重症化しやすい難病の方々のバリアとなってガードすることにも繋がります。そして7割の人が抗体を持つことによって、ウィルスは自身をコピー(増殖)できる環境を失い、やがて根絶(終息)することとなるのです。
2度のワクチン接種によって抗体を持った人自身の感染リスクが格段に下がることは事実ですが、感染しなくなる訳ではありません。抗体の量が不十分な場合に、細胞内への侵入を防げない場合もあるからです。また、ワクチンの接種を終えて以降もウィルスのキャリアー(運搬者)となる可能性は変わらないため、大切な人を守るためにも感染予防対策の継続が求められます。
今回のメッセンジャーRNA(遺伝情報を転写する働き)により生成されたワクチンは、毒性情報(イントロン)を除くウィルスの遺伝情報(エクソン)をタンパク質に翻訳して伝えることにより、抗体の生成を始めるスイッチを入れさせるためのものです。イメージとしては、瓜二つのバーチャルの敵に戦いを挑んで傷を受けることなく経験値だけを積み上げる、そんな感じでしょうか。そして本物の敵(COVID-19)に遭遇した際には、既に経験済みであるため、細胞内に侵入できなくするにはどうすべきかに熟知していて、容易に“戦わずして勝つ”という訳です。まるでRPG(ロール・プレイング・ゲーム)の世界観ですが、近年の遺伝子免疫療法における医療技術の発展・進歩には驚かされるばかりです。
しかしながら、ワクチン情報から抗体をつくる過程においては、副反応が出現します。これは、アレルギー反応と同じで、体内に異物の侵入を検知して白血球他免疫を動員し過ぎるなど、自国の防衛軍で自国の領土を破壊してしまう、いうなれば過剰防衛です。つまり、副反応はワクチンによる攻撃ではなく、自分で自分を攻撃している状態で、それによりワクチンを接種した部分が赤く腫れ上がったり、熱を発したりします。しばらくして『なんね、敵やなかね。苦労して抗体ばつくったとに…(福岡弁)』と、程なく副反応は落ち着きます。この副反応は生命力に盛んな若者に強く現れやすく、極めてまれに重症化することもあるようですが、一般に長続きはしません。
こう考えると、ワクチン接種って、防災訓練に似ている気がします。実害は被らないものの、『張り切りすぎて、訓練中に転けて膝を擦りむいてしまった(副反応)』みたいな…。でも、本番にはその経験が生かされる。そんな感じです。
職域の優先接種が始まり、園の職員も1回目のワクチン接種率が3割を超えた辺りで、2回目の接種完了を9月初旬に見込んでいます(滞りなくワクチンが届けられれば…)。それから2週間ほどで殆どの職員に充分な量の抗体ができあがる算段ですが、それも先述のイプシロン(ε)株が出現しない前提での話です。そうであって欲しいと願いますし、園では新型コロナウィルスが終息するまで、これまでと同じように感染予防対策に努めて参ります。
※本コラム掲載後、既にイプシロン(ε)株、ゼータ(ζ)株、イータ(η)株、シータ(θ)株、イオタ(ι)株、カッパ(κ)株、ラムダ(λ)株まで存在することについてWHOの報告を確認しました。
中でも南米ペルーで発見されたとされるラムダ(λ)株の毒性がデルタ(Δ)株を上回るとして警戒を強めていますが、現在私たちが接種しているワクチンが、これらの変異株にどの程度効果があるのかについては現時点で不明です。もしかするとワクチン生成の過程で活用したmRNAのメッセージ情報が、既に古くなってしまっている可能性もあります。それでも現時点で他に対抗手段はなく、イスラエル政府やヨーロッパの一部の国で現ワクチンの3回目の接種を推奨するなど、私たちの新型コロナとの闘いはまだまだ継続されることになりそうです。(2021.8.13追記)