ハロウィンは、もともとはイギリス・ケルト地方で収穫の時期を終えた10月31日を1年の終わりとして、新年を迎える前の厄払いのような感じで続けられていたお祭りです。悪霊を寄せ付けないよう、怖い恰好をして町内を練り歩いていたんだそうです。スピルバーグの映画「E.T.」の大ヒットによって、日本でもハロウィンのお祭りが広く知られるようになり、いつしか日本の季節行事の一つにも成っているようですね。
2023年5月8日に感染法上の位置付けが第2類から第5類へと変更された新型コロナ感染症(COVID-19)。2020年1月に我が国への上陸が確認されてから3年半の時を経過しました。最初に緊急事態宣言が発出された同年4月には、誰もがこれほどの期間を要するとは思わなかったことでしょう。
大正中期、今から約100年程前に猛威を振るったスペイン風邪も終息に至るまでには約2年半を要しましたが、当時とは住環境も衛生環境も異なるため、当初は『長くても1年くらいかな…』と、より短期に終わるだろうと高(たか)を括(くく)っていました。
しかし、よくよく考えてみれば、住環境、衛生環境が異なるからこそ、新型コロナの終息までに大正期以上に時間を費やしたと云うべきなのでしょう。というのも、スペイン風邪はブログ「新しい生活様式」-“コロナ禍”に学ぶ-(2020.7.3)にも記したように、当時の人口約57,00万の約70%超が抗体を持ったことで、集団免疫ができ終息したと考えられていますが、当時国が確認した感染者数は約23,00万人(約40%)で、残る30%に統計的な確認はありませんでした。対して今般、新型コロナに感染陽性者の確認数は2023年5月8日時点で33,80万2,739人(約38%)ですが、同様に残る32%(集団免疫70%と仮定の場合)に抗体の有る無しの確認はありません。しかし、大正期との大きな違いは、罹患に代わるものとして3回以上ワクチンを接種した者が68.71%(86,51万9,802人)に達していたという点です。勿論、これらの数字には重複する者もあるため明言はできないものの、ほぼほぼ国民の間に集団免疫ができ上がっていたと考えられるのだろうと思います。コロナ禍終盤に感染力は強いものの毒性の低いオミクロン株が第7波、第8波と大流行したことによって、ようやく終息を迎えることとなりましたが、パンデミックの終焉とはこうしたものなのでしょうか。大正期には、コロナ株の変異までは記録されていなかったことでしょうから、序盤と終盤で感染力や毒性にどのような変化があったのか今となっては知る由もありませんが、今般の新型コロナ感染症の3年超に及ぶ記録は、私達に次のパンデミックに備える大きな示唆と知見を与えてくれたのだろうと思います。
RNAによるワクチン生成の技術、三密の回避、マスクの着用と定期的な換気並びに手指消毒の有効性等により、大正期のスペイン風邪の国内死者数38万人に対して、2023年5月9日時点での新型コロナ感染症死者数は7万4,694人と約四分の一でした。勿論、当時と今日とでは母数(人口)が異なりますから、この数字に現在の人口比率を掛け合わせると、その数は3万3,612人となり、大正期に比べて一〇分の一以下に抑えられた計算になります。逆を言えば、大正期と同じ感染対策しかでき得なかったとしたら、現在の人口(1億2千700万人)に換算した場合、約89万人以上の命が失われていたかもしれないのです。そういう意味で言えば、終息までに多くの時間は費やしはしたものの、私達はこの百年間の英知を結集して、この難局を乗り切ってきたと知り得る訳です。
5月8日以降、当園でも身近にコロナ感染症陽性・罹患の話を聞くことはなくなりました。しかし、直後からRSウィルス感染症、アデノウィルス感染症、溶連菌感染症他による園児の欠席が急増しました。『折角コロナが終わりなってきたのに…』と少々恨めしくも思いましたが、これは当園や北九州市の一部の傾向ではなく、全国的にも都市部の小児科でコロナ以外の感染症受診が急増し、医療が逼迫しているとの報道がなされました。原因として報じられていたのは、平常であれば上記のウィルスに子どもが順繰りに感染しながら抗体を作れていたものが、コロナ禍対策によって3年間抗体を作れなくなっていたところに、対策の終了によって一気にそれらのウィルスに曝され、急速に感染が拡大したのだろうということでした。
『なるほどぉ…』と納得したものの、結局、感染なりワクチンなりで体内に抗体を作らない限りはウィルスや細菌に対抗することはできないのだなと、ようやくwith coronaの意味が理解できた気がしました。そう言えば昔、おたふく風邪に罹患している子どもの所に我が子を連れて行って、わざと感染させるお母さんがいましたが、あながちそれも間違ってはいないんだなと思いつつ、新型と言われる未知の感染症に故意に感染させることもできず、どんな風にwithするのがベストなのか今後も探り続けていく必要があるのだろうと思います。